歯周病と咬合性外傷、ストレスとの関係

歯にかかる大きな力

歯周病は、一般的にいって歯茎のまわりに炎症が起きて、歯茎だけでなく歯茎と歯のまわりを支えている歯根膜線維や歯槽骨を侵していく病気です。原因の一つには歯垢(プラーク)があげられます。この歯垢の大部分が細菌で、残りは歯肉上皮や赤血球などを含んでいます。

また、歯は物を食べたり、話をしたりするという重要な役割を持っていますが、それは上顎と下顎の歯が噛み合う作用で行われます。物を食べるときには、上下の顎の歯に大変大きな力が加わり、それは、とくに奥歯では瞬間に、60キログラムもの力が加わるといわれています。

このような力を、顎はよく支えているものだと思いますが、歯と顎の間には歯根膜とよばれる靭帯様の膜があり、この歯根膜は力が直接顎に伝わらないように、緩衝作用、すなわち「クッション」の役目を果たしています。
歯周病が高度に進行すると、クッションの役目の歯根膜線維が崩壊して、歯が動き出してきます。俗に噛む力が少なくなり、硬い物が食べられなくなるという状態です。このような状態で、さらに噛み合わせのときの強い力が局所的に加わる(外傷性咬合)と、歯周病と両者で相乗作用を起こし、歯周病はますます悪くなっていきます。

ストレス解消で歯も健康に

最近は、このような器質的な変化のほかに、精神的なストレスが加わって歯周病をますます悪化させる場合が出てきます。
“ブラキシズム”といって、就寝後、上下顎の歯をガリガリ音を立てて噛む人がいます。俗にいう「歯ぎしり」です。他人が聞くとすごく気味の悪いものですが、本人の意識は全くありません。このブラキシズムが生じるときも、歯には多大な力が加わり、歯周病を悪化させる原因となります。

バイトガード、ナイトガードという上下顎の歯が噛み合わないようなスプリントを口の中に入れて治療をしますが、咬合性外傷を器質的に治しても、精神的なストレスからも生じることがあるため、この場合は精神的に抑圧されたものを除去しないと治らないということになります。それにはどのようなストレスかを十分に知ることが大切です。

そのためには、患者さんに対して、日常生活の中で問題になるようなことを洗いざらい話をしてもらい、その中から注意深くKEYとなる問題点を探り出す必要があります。さらに意識下のストレスの原因がつきとめられたとしても、ただ「嫌なことを忘れなさい」というだけでなく、精神的な安定をはかれるよう精神面のフォローも、歯周病に打ち勝つためには必要なものなのです。